オフィス体育の時間 REPORT|会社に健康習慣ができるには?[第1回]
会社に健康習慣ができるには?
社員に「運動しましょう」と呼びかける前に、会社が変えられることがあります。
社員の健康を考えて、朝礼で体操をしてみた。健康に関する資料も配った。始めた日はみんな動いてくれたのに、しばらくすると元に戻ってしまった。
職場の健康づくりを考えると、こんな場面が思い浮かぶかもしれません。
なぜ続かないのでしょう。「社員の健康意識が低いから」と考える前に、少し違うところを見てみたいのです。
この記事で考えたいこと
職場では、体を動かすことに遠慮が生まれる
たとえば、仕事中に肩が重くなった社員が、席を離れて少し体を動かしたいと思ったとします。
「今、立ち上がってもいいのかな」「忙しそうな人の横で体操したら、さぼっていると思われないかな」
そんな気持ちがあれば、体を動かすことを知っていても、実行しづらくなります。
厚生労働省の「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」でも、職場に理解がないと、活動的に過ごすことが「仕事をさぼっている」と誤解されかねない点が挙げられています。
つまり、健康習慣をつくるために最初に変えたいのは、社員の意識だけではなく、職場の空気なのです。
続きにくい職場
「健康のために運動してください」と伝える。動くタイミングも方法も社員任せ。
習慣を育てる職場
「仕事の途中に数分、体をケアしていい」と会社が伝える。時間と方法も用意する。
会社が用意したいのは、3つの条件
立派な設備や大きなイベントより先に、小さくても毎日の仕事に残る仕組みを考えます。
動いてもいい「許可」がある
「健康が大切」という方針だけでは、仕事中に体を動かしやすくなるとは限りません。経営者や責任者が「仕事の合間に体をケアする時間を取ってよい」と言葉にし、実際にそうできる雰囲気をつくります。
職場の状況に合わせて、始業前後や休憩の前後など、無理なく取り入れられる時間を決める。社員の自主性を尊重しながら、仕事中でも体を気にかけてよいことを会社として示すのです。
迷わずできる「動き」がある
「何か体操をして」と言われても、何を、どの程度すればよいか迷います。最初から多くのメニューを渡すより、職場で無理なく試せる動きを一つずつ覚えていくほうが、始める負担を小さくできます。
動きの目的とやり方、安全上の注意がわかる説明や短い動画があれば、社内に運動の指導者がいなくても、社員が自分で取り組む入口をつくれます。痛みがあるときに無理をしないことも大切です。
休んでも戻れる「仕組み」がある
毎日欠かさず続けることを最初の目標にすると、忙しい日が一度入っただけで「続かなかった」と感じてしまいます。
出張や繁忙期でできない日があっても、翌日また取り組める。「昨日はできなかったけれど、今日は少しやってみよう」と自然に戻れる。そんな仕組みにしておけば、運動を義務ではなく日常の選択肢として残しやすくなります。
公的な考え方とも一致しています
厚生労働省は、職場での身体活動を増やすには個人への呼びかけだけでなく、組織や職場環境への働きかけが重要だと説明しています。また、運動行動を変えるうえでは、できた経験による自信や、行動を妨げる要因を減らすことが大切だとしています。
「始めた理由」と「続けられた理由」は違いました
ここで、私自身の経験を少し紹介します。
以前は早朝のソフトボールで体を動かしていましたが、その活動がなくなり、運動不足を避けようとジムに通い始めました。最初の理由は「運動する機会をなくしたくない」というものでした。
ところが、続ける力になったのは、仲間と一緒に体を動かす楽しさです。ジムでの運動を重ね、筋トレや有酸素運動、体のケアが生活の一部になっていきました。今では朝2時30分に起き、ジムで運動してから朝5時に出社することが日課です。
始める理由は「運動不足を防ぎたい」。
続けられた理由は「仲間と動くのが楽しい」。
健康にいいと理解するだけで、習慣になるとは限りません。続ける中で本人にとっての楽しさや手応えが生まれると、運動は「やらなければならないこと」から「自分で続けたいこと」に変わっていきます。
もちろん、誰もが早朝にジムへ通う必要はありません。会社の健康づくりでも、まず体を動かすきっかけをつくり、一人ひとりが「またやってみよう」と思える経験につなげることが大切だと考えています。
「毎日5分」が、健康を意識するきっかけになる
たとえば会社が、毎日5分ほど体をケアするきっかけを用意したとします。
最初は会社に言われて始めた社員も、やり方がわかってくると「今日は肩が疲れたから、あの動きを少しやってみよう」と自分で判断できるかもしれません。
そうして覚えた動きが少しずつ増えると、会社が毎回声をかけなくても、自分の体を気にかける人が育っていく。目指したいのは、そんな変化です。
会社が用意するのは「きっかけと時間」。
社員が身につけるのは「自分の体をケアする力」。
会社で体操を一斉に行うこと自体が目的ではありません。社員が、仕事をする自分の体に目を向けられるようになること。その積み重ねが、会社の健康習慣をつくっていきます。
最初の2週間、何を確かめる?
大がかりな制度をつくる前に、一度、小さく試す方法があります。
会社が確かめたい3つの問い
- 社員は、仕事の合間に体を動かしてよいと感じているか。
- 自分で安全に試せる動きが、少なくとも一つわかるか。
- 忙しくてできなかった日も、翌日に再開できるか。
初めの1週間は会社から短い時間を用意し、動きのやり方を共有する。次の1週間は、続けやすかった時間や、できなかった理由を聞いてみる。参加人数を競うのではなく、社員が無理なく取り組める条件を見つけるための試行です。
ここで見つけた「できる理由」「できない理由」が、会社に合った健康習慣の土台になります。
健康習慣は、一日で完成しない
会社に健康習慣ができるというのは、社員全員が毎日同じ動きをすることではありません。
体のことを少し気にかける。疲れたときにできることを知っている。仕事の合間に自分で体をケアしても、誰も不思議に思わない。
そんな小さな当たり前が増えることです。無理なく続けていたら、いつの間にか体を動かすことが日常になっていた。そんな会社を、少しずつ増やしていきたいと考えています。
職場の健康習慣づくりを考える企業の皆様へ
体のケアを、社員が自分でできるように
「オフィス体育の時間」は、外部講師が職場に伺う訪問レッスンやオンラインレッスンを通じて、体の使い方やセルフケアを伝える企業向けサービスです。
社内に講師がいなくても始められます。最初の学びをきっかけに、社員が普段の仕事でも自分の体を気にかけられるようになることを目指します。
レッスン内容・料金を見る職場に合った進め方のご相談は、お問い合わせフォームから「会社の健康づくりのご相談」をお選びください。
[次回予定]会社に健康習慣ができるには? 第2回
「社員が自分から体を動かすようになるには?」
参考資料
健康状態や体力には個人差があります。痛みやめまいなどの症状がある場合は無理に運動せず、必要に応じて医療の専門家にご相談ください。本記事は一般的な健康づくりの情報で、医療上の診断・治療を目的とするものではありません。